Mr.Children 『It's a wonderful world』レビュー


  

醜くも美しい世界


Mr.Childrenの10作目のアルバム『It's a wonderful world』
It's a wonderful worldは日本語で”素晴らしきこの世界”という意味。

デビュー10周年にして発売された、10枚目のアルバムで
Mr.Childrenのキャリアの中でも重要な1枚です。

前作『Q』前々作『Discovery』とMr.Childrenらしくない実験的な作品が続いていました。


名もなき歌やTomorrow never knowsのようなポップな曲は減り、
実験的な楽曲は大衆受けせず、セールスにもつながっていませんでした。

そんな背景の中リリースされたこのアルバムは実験的な作品は減り、
一般的なMr.Childrenのポップな印象に接近したものになっています。

しかし、Mr.Childrenはセールスに媚びたわけではないのです、


このアルバムのコンセプトは"醜くも美しい世界"


醜い=実験的・美しい=ポップ
という構図がこのアルバムには顕著に表れています。

つまり、実験的音楽の要素をポップに落とし込んだ
Mr.Childrenの転換期作品が『It's a wonderful world』なのです。



"世界は今日も美しい"


まずは1曲目インスト曲『overture』から始まり
次のリードトラック『蘇生』にそのまま繋がっていきます。

『蘇生』というタイトルは新しく生まれ変わったMr.Childrenを象徴しているようですね。

この曲を皮切りに、前半戦はこれまで見られなかったポップな曲が続きます。

『渇いたKiss』や『ファスナー』といった曲は演奏はポップだが
皮肉めいた歌詞が極めてダークなので、ただただポップでは終わらない。

このようにポップの中にも何かしらのダークさがあるという曲が多いです。


そして8曲目の『Bird Cage』から一転、
もはや残虐ともいえるようなダークで実験的な曲が続きます。

前作、前々作で見られた実験的な楽曲に似た
ポップさの欠片もないダークな曲になっています。

この『Bird Cage』はダークミスチルの中でも極めて完成度が高いと思います。
曲のほとんどはバンド演奏が控えめなのですが、最後の大サビのところで
ベースはうねるわ、ドラムは暴れるわ、ボーカルは叫ぶわで
もう自分も何もかもぶっ壊して大暴れしたくなるような曲です。

そして12曲目の『君が好き』でダークゾーンを抜け
『It's a wonderful world』というタイトルにふさわしい雰囲気に変わっていきます。

フィナーレのラスト曲『It's a wonderful world』では


”世界は今日も美しい”


と大サビで歌われます。


苦しくても生きてればいいことある
世界の美しさはあたりまえ過ぎて
気づけてないだけかもしれない。。。

というメッセージかもしれません。





個人的には11.『Drawing』の間奏がこのアルバムで一番好きです。
あのシンセとピアノのコラボレーション
フィッシュマンズに通ずる、ダブポップを思わせる揺らめいたギター
そして、懐かしいメロディーライン。
全てにおいて完璧です。『Best Of 間奏』の称号はこの曲に与えます
Mr.Children 『It's a wonderful world』レビュー Mr.Children 『It's a wonderful world』レビュー Reviewed by ピングー on 2月 11, 2018 Rating: 5
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