BUMP OF CHICKEN 『COSMONAUT』レビュー



宇宙とBUMP

2010年に発売されたメジャー4作目のアルバムです。
ジャケットは宇宙飛行士ですね、宇宙なのに大地は緑です。

COSMONAUT=『宇宙飛行士』という意味ですが、宇宙が詰まった作品というわけではありません。
どちらかというと、前作の方が宇宙感のある曲が多かったです。

COSMONAUTというアルバムタイトルになった理由を
Vo.藤原さんはこう語っています。

『宇宙飛行士への手紙という曲が先行シングルとしてリリースされましたけど、
この言葉は僕の頭の中でずいぶん前……2つ前のアルバム(「orbital period」)
くらいから存在していたものだったんです。個人的には大きな思いが詰まっている言葉というか……。
それは全然説明できない思いでもあるんですけど、
きっと今回のアルバムのタイトルになるんだろうなとは漠然と思っていて。』

このインタビューでは藤原さんは『宇宙』への思い入れも語っており、
彼の音楽観には宇宙の存在が大きいということが伺えます。

確かに、BUMPの楽曲には空・宇宙・星などをテーマにしたものが非常に多いです。

大名曲の『天体観測』もそうですね。

藤原さんの持つ宇宙観がこのアルバムを通して表現されています。

ここでリードシングル『宇宙飛行士への手紙』のサビの歌詞を引用します。

”出来るだけ離れないで いたいと願うのは
出会う前の君に 僕は絶対出会えないから
今もいつか過去になって 取り戻せなくなるから
それが未来の 今のうちに ちゃんと取り戻しておきたいから”

君の過去に僕が存在しないことを後悔している僕。
この後悔を繰り返さないためにできるだけ一緒にいたいと思う僕。


この歌詞には過去・現在・未来の時間軸がそれぞれ、君との関係性の中で表現されています。
宇宙、そして時間というのはこのアルバムの大きなテーマにもなっていますので、
それを意識して歌詞を味わってみてください。

洗練された小粒ぞろい


今回のアルバムのリードシングル曲は『R.I.P』『魔法の料理〜君から君へ〜』『HAPPY』『宇宙飛行士への手紙』
の4曲となっています。

前作にはテイルズの主題歌の『カルマ』や映画三丁目の夕日のタイアップ曲『花の名』
ライブの定番曲『supernova』など、BUMPを代表する曲が収録されていたのに比べて

今作はこのような大型の有名曲がありません!

『魔法の料理〜君から君へ〜』がNHKのみんなのうたに使われていた程度です。

つまり、”小粒の良曲が集まってできたすごいアルバム”というのがこのCOSMONAUTなのです。何曲か以下で紹介します。





1曲目の『三ツ星カルテット』からアルバムは幕を開けます。
ロックバンドとは思えないアコギを中心にした変拍子のこの曲から、
前作までのBUMPではないということがすぐに分かります。

そのまま2曲目のシングル曲『R.I.P』につながります。
この曲は本当にシンプルなバンドサウンドの曲で、
過去と現在の時間軸をぐるぐるしながら愛を歌ったラブソングです。
上述の『宇宙飛行士への手紙』と歌詞の意味が似ている部分があるので、
この曲でアルバムのテーマがなんとなくわかってきます。

3曲目の『ウェザーリポート』
非常にコンパクトで落ち着いた演奏の可愛らしい曲です。
歌詞も相合傘をテーマに愛を歌ったシンプルなラブソングとなっています。
歌詞解釈で『女の子が最後に車に轢かれた死んだ』
というものがファンの中であります。
最後の歌詞を意識して聞いて、それぞれの解釈をしてみてください。
私はそんな残酷な最後とはおもわないのですが。。。

4曲目の『分別奮闘記』
ケルト音楽のような演奏で、少しふざけた歌詞が印象的な曲です。
前作の『かさぶたぶたぶ』と同じようなユニークポジションです。
演奏はロックとは言い難いBUMPらしくないものになっています。
このアルバムは全体的に曲の幅が広く、この曲のようにBUMPの今の
イメージとはかなりかけ離れたものが多くなっています。
最近のBUMPは『記念写真』のようなキラキラしたサウンドが多いですからね。

少し飛ばして7曲目の大名曲『魔法の料理〜君から君へ〜』
NHKのみんなのうたに使われていただけあって、
本当に完成度が高い名バラードだと思います。
曲のタイトルの通り、昔の自分が未来の自分に語るという歌詞の曲です。
やはりこの曲も『時間』というものを意識したものになっています。
大人の私としては本当に心にくるものがあり、
聞いていて泣きそうになることがあります。
大人のみなさんは是非この曲で泣いてください!

シングルが続きます8曲目『HAPPY』
最近ではあまり見られなくなったロックなBUMPが感じられる曲です。
途中でギターソロも入って、完全にポップロックです。
この曲のなにがいいって、歌詞がいいです。

『悲しみは消えるというなら 喜びだってそういうものだろう』
という半ば諦めのメッセージの後に
『消えない悲しみがあるなら 生き続ける意味だってあるだろう』
という流れ。ものすごく元気をもらえる曲です。

曲の最後にHappy Birthdayを連呼するので、
誰かの誕生日にはこの曲を歌ってあげてください。

9曲目『66号線』
バンド演奏を中心にしたミディアムバラードです。
リズムがマーチ風になっており、全アルバムの『飴玉の唄』に少し似ています。
恐らく他のどの曲よりもクセがなく、万人受けする曲だと思うので
他人にこのアルバムを勧めるときはこの曲を推していきましょう。

この曲はVo.藤原さんが親友に向けて作った曲です。
歌詞から推察するに音楽関係の友人への曲でしょうね。
『君がいるから歌える』的なことが書いてあるので。。
抽象的な表現が多くて分かりにくい歌詞ですが、
サウンドとメロディーの完成度が高いのでそこに注目して聞いてください。

少し飛ばして11曲目『宇宙飛行士への手紙』
この曲にはアルバムを通してBUMPが歌いたかったことが詰まっています。
この曲のインタビューでVo.藤原は『自分の中では時間について考えることはすごく大切なことだし、誰もが普段から考えていることでもあると思うんです。
だから、自分の思考の多くを占めることが歌詞になるんですね。』と語っています。

この言葉の通り、この曲では時間というものが強く意識されています。
止まることのない時間。戻らない時間。過ぎていく時間。
このような時間の持つ不可逆性がこの曲で表現されており、
これがそのまま今作のアルバムのテーマでもあると思います。

サウンド面に関しては4つ打ちビートが印象的な
ミディアムテンポのロックですね。
イントロは宇宙感のあるシンセサイザーから始まるのですが、
それ以降はあんまり宇宙を感じないサウンドです。
歌詞にある『蜘蛛の巣みたいな稲妻』というのは実際にVo.藤原さん
が幼少期に見た景色がそのまま歌詞になっています。
ギターソロの部分はこの稲妻が表現されているかのような、不規則で
激しいものになっていますので是非お聞きください。

最後の曲『beautiful glider』
アコギの美しいアルペジオが印象的な曲です。
1曲目の『三ツ星カルテット』と対になったバラードです。
このアルバムは始まりも終わりもアコギのアルペジオです。
しかも、どちらも変則チューニング!
変則チューニングとは、いわばアルペジオのためのギターチューニングですよ。
BUMPはアルペジオが得意なバンドだと思います。
最近の曲でも昔の曲でもコードの後ろでアルペジオのフレーズが鳴らされています。
その中でもアコギ一本とリズム隊だけのこの曲はBUMPのアルペジオを堪能できる曲です。

一味違ったBUMP


長々レビューをしてきましたが、このアルバムの良さはズバリ

風変わりなBUMPがそこにいる

ということです。

フォークっぽさが見られる歌メロ重視の初期BUMP
かっこいいキラキラした演奏の最近BUMP


これら二つのBUMPをつなぐ架け橋的なポジションのこのアルバムには
今でも昔でも見られないCOSMONAUTだけのBUMPがいます。
サウンド的にも歌詞的にも難解な部分が多いですが、それすらも楽しんで何度も聞いてほしいアルバムです。

一回聞いただけでは良さがあまりわからないかもしれません。

しかし、噛めば噛むほど味がするスルメアルバムがこのCOSMONAUTです。

だから何度も何度も聞いてください。唯一無二のBUMPがここにはいます。


(友人に勧めるときは別のアルバムにしましょう。)




































BUMP OF CHICKEN 『COSMONAUT』レビュー BUMP OF CHICKEN 『COSMONAUT』レビュー Reviewed by ピングー on 5月 23, 2018 Rating: 5
Powered by Blogger.